VIVISICK 2nd「NUKED IDENTITY」release interview part1
THRASH HARDCOREとJAPANESE HARDCOREを軸にオリジナリティ溢れる素晴らしいハードコアを体現するVIVISICK!凄まじいエナジーで展開されるが、決して勢いだけではないPUNK/HARDCOREを土壌にした独自の色が滲むライブは少しでもPUNK/HARDCORE、またはラウドな音楽に興味がある人に一見の価値があると断言できる。アメリカ、ヨーロッパ、ブラジル、東南アジア、韓国など世界中をツアーし、国内でも数々の海外バンドのツアーサポートを行い、名実ともに日本を代表するHARDCORE PUNK BAND。若い世代のHCキッズに多大な影響を与えつつ、大御所PUNKSをも唸らせる叩き上げ。長いキャリアにも関わらずメール以外のインタビューは意外な程少ない。月並みな言葉になるが、彼らは変化を恐れず、未だ追求を止めないフロンティア・スピリッツに満ちていた。2015年8月に発売される2ndアルバム「NUKED IDENTITY」今作に至ったバックグランドを紐解く為、彼らに話を聞いた。
【各メンバーのルーツ】
─まずは2ndアルバム完成おめでとうございます!ルーツを交えての自己紹介をお願いします。
KAZUKI(以下K):ギターのKAZUKIです。ルーツというか1枚のアルバムとして衝撃だったのはIRON MAIDENの1stかな、今聴いても最高です。
HITOSHI(以下H):ドラムのHITOSHIです。
HARDCOREのルーツはUKアナコーパンクBAND。特にCRASS、CONFLICTにヤラれました。
日本だと不法集会やTHE PUNXをよく聴いてました。
十代から二十代にMESSED UPってバンドをやっていてそれもUK HARDCOREの影響下の音でした。
TAKAHASHI(以下T):ベースのTAKAHASHIです。はじめは小学生の頃に兄貴の部屋から流れて来てた、モトリークルーやガンズとかのいわゆる洋楽。
中学になるとスレイヤーとかアンスラックスとかのスラッシュメタルに行って
SUNAO(以下S):あとVIO-LENCEでしょ。
T:そう。あとSEPULTURAとか。周りではPANTERAブームが来て。
一同:あ~あったね
T:それからデスメタルとかも聞いて、その流れでBRUTAL TRUTH、SPAZZとかに行き着いた感じ。
─では初めて聞いたHCはSPAZZだったのでしょうか?
T:いや、初めてはSICK OF IT ALL。
─意外とNY系なんですね。
T:でも「ほぉー」って感じだったかな。YOUTH OF TODAYとかの方が良かった。そこからBAD BRAINSとか聞くようになった。
HARU(以下HA):ギターのHARUです。
始めてバンドを組んだのが15の時で、ルースターズとかのメンタイロックのバンドや、ラフィンノーズとかラモーンズの曲をやったりしてましたね。
S:ボーカルのSUNAOです。もともと高校の時はスラッシュメタル好きだったんだけど、PUNK好きな友達が初期PUNKのテープ作ってくれて、その流れで見たロックンロール・スウィンドルのビデオに衝撃を受けました。笑。
―どのような部分で衝撃だったのでしょうか?
S:なんか思想というか世の中に対する姿勢という部分で。
オレはハーフだから人と同じになりたかったんだけど
見た目が日本人じゃないってだけで”人と違う”っていうのを子供の頃から経験して来て。
だから人と同じになれない事に凄い悩んでた。
だけど、そのロックンロール・スウィンドルで初めてPUNKの世界に触れた時に「あ、いいんだ。違くても」っていうのを初めて知って。
それまで人と違う事が肯定される世界があるって事を知らなかったので。それがとにかく凄い衝撃的だった。
─思想的にという事ですが、サウンド的にはいかがですか?
S:サウンドも好きでしたよ。平行してSuicidal Tendencies、BIOHAZARDみたいなのも聴いてた。あと丁度メロコアが流行る前夜くらいでLOFTでNOFXも見たり。メロディックなハードコアも凄い好きでしたね。そんな感じで初期パンクと、スラッシュメタルみたいなのと、メロディックハードコアの3つどもえで色んなの聴いていって、段々とUSハードコアとか聴くようになっていった。
【アルバムのタイトル】
─では今回の「NUKED IDENTITY」というタイトルについてですが、これはどのように決まったのでしょうか?
S:ふと思い浮かんで。この言葉が。
3.11や原発の事故があって、今まで信じていたものが崩壊した部分があると思って。
例えば日本人は豊かで金持ちで幸せってイメージ。そういう状況でこのタイトルは現状を表してるかなと。崩壊してしまったのであれば、また再構築して行こうっていうニュアンスを込めてる。
─個人的に今の日本の現状(社会や政治、教育現場、労働環境など)では個の獲得が難しい、自分という存在を確認・認識する事が困難だという意味が込められているのかと推測しましたがいかがでしょうか?
S:個の獲得について、それが多くの人にとっては経済だったんじゃないかと思ってて。
T:そう。日本には宗教は無いと思われてるんだけど、結局は「経済」っていう宗教だと思う。
例えばコンビニで店員に偉そうにするのも「オレは客だぞ」っていう感覚からな訳で。
─金を払ってるから偉いという
T:経済の考え方で言うと消費者の方が偉い。それが極端に進んでる国だなって思ってる。
S:でもそれが危ういものだっていうのがバレつつあるんじゃないかと。
経済の豊かさっていうのは永遠じゃないし、何かあれば崩れてしまうモノだっていう。
それを表す言葉としてふっと思いついたのがコレだった。
理屈じゃなくインスピレーションで今を表す言葉かなと。
─タイトルの曲が無いんですよね
S:無いんだけど、このタイトルが全体を貫いていて。
最初のイントロもちょっと物悲しいんだけど最後は盛り上がって来て、何かを創造していくような、希望を感じるような曲構成になってる。そしてアルバム全体でも進むにつれて、アイデンティティを獲得していくような流れになっています。
【変化】
―今回のアルバムのサウンド面なんですが、かなりサウンドの進化が感じられたのですがご自身ではどのように思いますか?
T :意図的に変化させたという訳ではなく自然に滲みでたモノかなと。
面白い事を探って行ってたどり着いたっていう感じ。まぁ、これは昔から変わってないですね。
─自然に出て来たという事ですが、それにしてもより深い進化を感じました
T:うーん、エピソードとして一個覚えてるのは「ピーターパン症候群の憂鬱」とか「断ち切られた蜘蛛の糸」みたいな
ちょっとメロディアスな感じの曲は前から頭の中にはあったんですよ。
でも、みんなで合わせてみて若干ピンと来ない部分もあったりして。
─これはVIVISICKじゃないんじゃないか、という
T:あんまり考えないようにしてたけど、正直。
でもそれをみんなに言ったらSUNAOが
「いや、やっとこういう曲をやれるようになったんだから、どうしてもやりたい!」って言ってくれて
そこからオレの考えも少し変わって来た。
それは嬉しい事でしたね。新しい試みを後押ししてくれるメンバーがいたんだから。
─「ピーターパン症候群の憂鬱」を聞いた時、他の皆さんはどう思いました。
S:今の話の通りなんだけど、オレは違う曲が来れば来るほど面白くって。
今までもHCにどっぷり浸かって来てるから、たぶん何やってもそのフィーリングは出ているじゃないかと。
HARDCOREのダシがPUNKだと思ってるんだけど、そこわかってやっている分には何やってもおかしい事にはならないと思う。上っ面でやったら変な事になるけど、土壌も出来ててダシも効いてるから、違うアプローチをしても薄っぺらい事にはならないと思ってる。
K:戻って来て前と違う面白さがあるなと思ったかな。
(※KAZUKI氏は元々VIVISICKに在籍していたが一旦離れてまた戻ってきた経緯がある)
S:確実に豊かになったと思う。KAZUKIとHARUのギターによって。
T:色んな表現が出来るようにはなったよね。
S:それは各パートで挑戦したんだと思う。
─変化する事への抵抗は無かったですか?
H:無かったです。オレも勢いだけの時代が終わって来てたからタイミング的にも丁度よかったのかも。
HA:一曲一曲良いモノを作るだけだからね。出来上がったらこうなったということですね。
H:核のフレーズを作ってる人は同じだし、トータルでみると違和感みたいのは無いかなと思う。
K:うん・・・(抵抗は)無い。まぁ、カッコいいからいいじゃんっていう。
T:結局はそこなのかなと。自分達にとってカッコいいモノをやってるって自信がある。
前とまるっきり同じ路線を期待してる人はガッカリするかもしれないけど、オレらとしても前と同じ事は出来ないからね。もちろん昔を否定している訳ではないですよ。
HA:昔の曲は昔の曲で凄いカッコいいし。
T:それを今の曲とミックスしてやったライブは昔のライブよりカッコいい筈だし、実際いまの方がライブ自体カッコいい自信があるかな。
S:前のは前のでもう良い曲があるんだから、同じような曲を作る必要は無い。
もっと違う事やったほうが面白いに決まっているかと。
(変化がどうっていうよりも)オレはこのアルバム聞いたらみんな喜ぶだろうなー、タマげるだろうなーって事しか考えてなかった。笑。
あと前は勢いだけでやってたんだけど、今は勢いだけじゃないHARDCOREの良さを表現出来てる自信もある。
─SUNAOさんが思う勢いだけじゃないHARDCOREとはどのようなバンドになるのでしょうか?
S:誰だろう。DEAD KENNEDYSとかかな。あれは勢いだけじゃないと思う。BAD BRAINSもそうかな。
T:BAD BRAINSは勢いも凄くない?笑
でもとにかく、プラスアルファなんだと思う。勢いだけならハチャメチャにやれば出せるし、テクニカルなだけなら練習すれば出来る。
相乗効果だと思う。生活と一緒で複合的なモノ。その中で到達したのがこのアルバムなんだと思う。
【ジャケットのイラスト】
─ジャケを書いているGARAKOZYさんはどのような方なのでしょうか?
T:話が面白くて、とにかく豪快な人ですね。出身は九州の天草地方でテレビでも特集されたことがあるくらい交通の便が悪い所らしくて。
もともとこのジャケットの絵は上野公園でライブやった時にライブペイントしてくれたモノに加筆・修正して完成したものなんですよ。
アルバムとリンクさせたアートワークにしたかったからプリプロの音源と歌詞も全部渡して何回も色々な話をしながら進めて
曲毎に絵を描いて欲しいっていう大変な依頼も喜んで引き受けてもらえました。
【パッケージについて】
─BOXタイプのジャケというアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
T:リリースするなら何か特別感を出さないと面白く無いなと思っていて。
凄いカッコイイ音でいわゆる普通のジャケのCDとかでも全然良いんだけど、自分が手にした立場で考えるとプラス付加価値があったらやっぱり嬉しいじゃないですか。色々案があって、業者に 連絡したらジャケだけで100万かかるってのもあった。笑
そういう事を積み重ねて今回の形に。
S:何か木箱にこだわってる時期あったよね。
H:あと何かフチを燃やして、炙ってみたいな。なんだっけ?笑
T:ありすぎて思い出せない。笑
でもさっきの100万じゃないけど今回の仕様だって結構な金額が掛かってるから頑張らないと回収出来ないんだよね。
―今回のアルバム、この仕様で1500円という事ですが
T:そう、これはある意味自主リリースだから出来る強みの一つなのかなと思う。
各素材の安いとこを調べて分離発注したり、紙を折って封筒に入れたり、シールを貼ったりとか出来る部分をメンバーで分担してコストを抑える方向で。
「安かろう、悪かろう」はもちろんイヤなんだけど、「高かろう、良かろう」っていうのも
やろうと思えば出来ちゃうかなって。
安くて良いモノが出来ればそれが理想だなと思って色々努力と工夫を重ねました。
―それは物販にも反映されてる気がしますね。確かTシャツ1300円位でしたよね。
S:それはライブのチケ代があるから。それを払っている人には少しでも安くしたいなと思って。
だから基本的に店には卸したりしてないんです。通販も。
沖縄とか中々行けないような場所だったら1~2回卸したこともあるけど。
なんだろう、ライブに来てくれた人へのお礼というか。
T:日本の状況だと海外みたいにチケ代を安くする事は簡単じゃないから。
【変化(メロディ)~作曲方法】
─今回、大胆にメロディを取り入れているなという印象も持ちましたが、その辺りはいかがでしょうか?
S:元々そういうのが好きなんですよ。GRIMPLEとか。だからメロディあるのが出来るようになったのは凄く嬉しい。そしてHARDCOREでありながらポップセンスがあるっていうのがとにかく重要で。
T:それは今のメンバーだから出来る事だと思う。
単純にスタジオとかでも面白いしね。ムードメーカーのHITOSHIもいるから。笑
H:えっオレ?そうかな 笑
T:なんかドラムも陽気なんだよね。
S:やってて気分が上がるね。ちょっと南米みたいな感じもする。
─VIVISICKのポップセンスにマッチしていると感じました
T:ポップセンスって言ったらHITOSHIがやってるJABARA.も凄いと思う。
S:キャッチーさを支えてるのがFUNなビートだっていうのは絶対あると思うよ。
─今回キャッチーさをさらに押し出してきたのかなと思いました。
T:Mukeka di Ratoとのスプリットがターニングポイントだったのかな。今思うと。
S:キャッチーさは重要で、そういう中で「ピーターパン症候群の憂鬱」みたいな曲が出来て、妙にシンクロしてたんです。
これまでも不思議なシンクロがあって「こういう曲やりたいな」っておもったらTAKAHASHIが丁度そういうの持って来たりして。
H:二人でこういうのやりたいね、みたいな話はしないの?
S&T:しないんだよね。
S:多分、同じライブを見て共有してる部分があるから自然とそういうシンクロが生まれたのかなって思うんだけど。
T:それはあるだろうね。
あとオレは同じような曲ばっかりにならないように結構、曲のバランスとかも考えたりしますね。
アルバム作るってなったら「口ベース集」からチョイスして、素材をMIXしたりもするし。
─口ベース!
T:そう、未だにコードとか知らないから。
仕事中とか影で携帯に「デデンデデデーデ」とか。笑
─では曲の骨組みをTAKAHASHIさんが作ってスタジオで合わせるという形でしょうか?
T:基本的には。でも、みんなで合わせてるうちに曲が変化していくかな。
今までのVIVISICKの中で今回が一番原型から進化した。それがバンドとして楽しくて。
H:あんまり一人だけになってもね。
T:でも作ったものが変わっていく事をプラスに考えられない時期もあったりしたんだよね。
今のメンバーだからかな。それぞれのアレンジで色を出してくるとニヤっとする感じで。笑
K:ニヤっと。あるね。笑
T:そうやってバンドで曲を進化させていく事にずっと憧れてて今回のアルバムではそれが出来てると思いますね。
VIVISICK 2nd New Album
「NUKED IDENTITY」
2015年8月発売/1500円(税抜)
VIVISICK Recordings(Japan), TANKCRIMES(USA), AVAIL Records(Malaysia), BONGHWANG Records(Korea), INSANE SOCIETY(Czech)
12Pのタブロイド新聞型インサートが封入されたBOXタイプジャケット
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VIVISICK2ndアルバム「NUKED IDENTITY(被曝したアイデンティティ)」
海外有名パンクバンドと比べて、日本のハードコアパンクバンドのライブは素晴らしいものが多い。その代表と言えるのが、今回2008年の1stアルバム「RESPECT AND HATE」より7年ぶりとなる2ndアルバム「NUKED IDENTITY」を発売するVIVISICKだ。
VIVISICK節とも言えるサウンドのポップセンスやコーラスワークは、健在どころか進化を遂げ、5人編成になった音圧と迫力は、あの超絶激情ライブを彷彿とさせる。彼等を知らない・観たことが無いというのは、人生の素晴らしさをひとつ知らないということに等しい。その意味を知りたければ迷うことは無い。今すぐこのアルバムを聴くだけだ。
新聞のような歌詞カードも非常に読みやすく、歌詞の内容、韻の踏み方、コーラス部分のセンス等、この想いの強さが心に響かない人間の愛はニセモノだろう。
完全自主制作でVIVISICKを中心とした、アメリカ、マレーシア、チェコ、韓国のレーベルとの共同リリースで、今後LPはアメリカから、カセットテープはマレーシアから発売される。まずはこのCDを聴いてVIVISICKのライブに行く準備をしろ!お前の人生は劇的な変化を遂げる!
(ISHIYA / FORWARD)